ArcGIS Earth 1.8 が日本時間の本日(10月12日)からダウンロードできるようになっています。Esri スタッフの投稿によると、2018年8月末に出るぞ出るぞアナウンスをしていましたが、9月末に「10月中旬に出る予定。」と再掲載され、ようやく本日(米国で10月11日)一般公開となっています。
目次
ArcGIS Earth とは
ArcGIS Earth とは、Esri 社が開発している無償の 3D ビューアーです。シンプルかつ軽量で使いやすいデスクトップ アプリケーションであり、
Maps for everyone on Earth
ちなみに、昨年リタイアした ArcGIS Explorer Desktop のキャッチコピーは "GIS for Everyone" でした。GIS → Map となり大衆向けの傾向になっているのですね。
ダウンロード
米国 Esri 社の ArcGIS Earth サイトよりダウンロードしてください。
チュートリアルもあります。
主な新機能
今回のバージョンアップでは特に 3D 解析機能が強化されています。今年リリースされた ArcGIS Pro 2.1 でも同様の機能が追加されています。3Dは「容易に見る」から「容易に解析する」段階にシフトしているようです。
個人的に興味深い機能をいくつか取り上げます。
標高断面図 (Elevation Profile)
指定したライン上の起伏がどのようになっているかを標高断面図グラフとして可視化できるようになりました。ラインは Draw や Measure で作図したものと、TOC に追加されているものが指定できます。表示したグラフは画像ファイルとして保存することもできます。
見通し線 (Line of Sight)
見通し線はサーフェス上の 2 点間のグラフィック ラインで、ラインに沿って視界が妨げられる場所を表します。観測点から目標点に対して見える部分と見えない部分を色分け表示します。この機能で観測点から目標点までの間でどこが見渡せるのか、見渡せないのか判断できます。
可視領域 (Viewshed)
観測点から指定した距離と角度で見渡せる領域を求める機能です。見通し線は点と点を結ぶ線に対して可視領域は面で表現できます。
見通し線と可視領域は別途作成したラインと組み合わせてアニメーションを作成することができるようですがまだ試していません。詳しくはヘルプをご覧ください。
また、見通し線と可視領域はツールが有効の間だけしか結果が表示されず、データとして保存することができません。そのため、その場で画像ファイルとして保存して活用するに留まります。
3D計測 (3D measure)
計測 (measute) 機能に 3D計測 (3D measute) 機能が加わり、2点間の水平 (Horizontal)、垂直 (Vertical)、高低差を考慮した直線 (Direct) 距離が求められるようになりました。
ブックマーク (Bookmakrs)
ブックマーク機能も追加されました。これまでは Point を作成し、プロパティの[Snapshot current view]を使用して関心地点をブックマークしていましたが、専用の機能が追加され、ブックマークの順番を入れ替えてスライドショーのように状況を地点ごとにアニメーションでプレゼンテーションすることができるようになりました。
ブックマークは [Settings]→[General]→[Export workspace]からベースマップ レイヤー、Terrain レイヤー情報と共に JSON 形式で出力できます。
日本語注記の改善
新機能としては書かれてませんが、I18N が強化され、日本語の表示が可能になりました。
バージョン 1.7 までは(1.7 はある時期からダウンロードできなくなっており、これまでは 1.6.1 が最新版だったようです) Draw ツールで作成した図形の名前と KML を読み込んだ際の注記が日本語だと文字化け(豆腐 □□□ となる)する問題がありました。ArcGIS Earth 上で作成した図形は config.xml に日本語対応フォントを指定することで回避できましたが、読み込んだ KML の注記文字化けは回避することができませんでした。バージョン 1.8 では config.xml でフォント指定すること無く KML も日本語が正しく表示できています。
What's New in ArcGIS Earth 1.8
ヘルプに記載の新機能一覧です。簡単に訳してみました。
インタラクティブな3D解析
ArcGIS Earth 1.8では、次の 3D解析機能が導入されています。
- 断面図 (Elevation Profile) - プロファイルグラフを作成して、連続した距離の標高変化を視覚化
- 見通し線 (Line of Sight) - ポイントまたはカメラからのインタラクティブな視線解析を行い、アニメーションを再生
- 可視領域 (Viewshed) - ポイントやカメラからインタラクティブな可視領域解析、およびアニメーションを再生
- 3D計測 (3D Measure) - 3Dの 2つの点間の水平、直、垂直の距離を測定
特徴
ArcGIS Earth 1.8には、次の新機能が含まれています。
- 高度プロファイル、視線解析および視点解析を含むインタラクティブな分析をサポート
- Webシーンと Webマップ レイヤーを ArcGIS Earth で統合
- 3D での距離計測
- Microsoftストアでの ArcGIS Earth 公開
- 特定の場所を保存して後で参照できるブックマークの追加
- あらかじめ定義された飛行経路で AOI(関心領域)を探索するためのモードの追加
- ポータル アイテムの URLを入力してレイヤーを追加
- 地物収集のサポート
機能拡張
ArcGIS Earth 1.8 には以下の拡張機能が含まれています。
- 描画機能の強化
- シーンから編集プロファイルを選択
- 描画ツールでポリゴン作成時にセグメントの距離を表示
- 描画ツールでライン作成時にセグメントの距離を表示
- TOC からラインの標高断面図を作成(訳注:TOC を右クリックし、[Elevation profile]を選択)
- 計測機能の強化
- パスやラインの計測時、頂点上に累積距離を表示
- 計測されたラインまたはパスの標高断面図を作成(訳注:measute ツールで計測後、[Elevation profile]をチェック)
- 場所検索 (geosearch) の強化
- 接続されたポータルの設定されたロケーターを一覧表示
- 検索 (Search) の XY 座標として XY Provider オプションの追加(XY 座標での場所検索)
- 検索結果を placemark として TOC に保存(訳注:マップ上の検索結果を右クリックし、[save as]で保存)
- スタートアップ ビュー(訳注:スプラッシュ スクリーン)のカスタマイズ
- シーン レイヤーの個別属性表示
- LERC 圧縮されたタイル スキーマのテレイン サーフェス TPK ファイルの追加
- ワークスペースのクリア機能を追加
- ベースマップと Terrain レイヤーのアイテム詳細表示
- オートメーションAPI の更新については、 APIリリース ノートを参照
まとめ
ArcGIS Earth は ArcGIS Online や Portal for ArcGIS のクライアント アプリケーションでもあるので、これらポータルにサイン インしてさまざまなサービスを重ねて 3D 簡易解析を行うのも良いでしょう。
従来からの機能である TIFF や NITF などの画像ファイルやシェープファイルも追加することができるので、「この地点だとこのように見渡せるのでこのような活動が推測できる。」といったような報告書を迅速に作成し、あるいは ArcGIS Earth でそのままブリーフィングすることもできそうです。
なお、ArcGIS Earth は ArcGIS Runtime SDKsがベースとなっているのですが、ArcGIS Earth Android もアルファ版が公開されています。
もちろん容易に可視化できることも大切ですが、数十、数百地点を解析したり、可視解析の結果を次の解析処理に渡すには従来からのジオプロセシングが必要です。簡易なユーザーは ArcGIS Earth で、より深く使いたい場合は ArcGIS Pro か ArcMap で行う、という棲み分けになります。