※広島県における飛行自粛等の要請は2018年8月2日付けで解除されました。
平成30年7月豪雨に伴う災害は、まさに地元の町で起きたものでした。実家も家が建って以来はじめて避難指示で退避したそうです。幸い実家は一晩の避難生活だけで元の生活に戻ったそうですが、被災された方々には心からお見舞い申しあげます。
はじめに
国土交通省の Webサイトに 7月13日付けで「平成30年7月豪雨に伴う無人航空機の飛行自粛の要請等」の掲載があり、広島県災害対策本部から指定区域では航空機(ドローンなど)の飛行を自粛するよう要請が出ております。そのマップがこれです。
手書きではなくなにかしらのソフトウェアで描画してるようには見えます。ArcMap でバッファーを作ったっぽいような地図に見えなくもないですが、背景地図の海岸線があまりにも小縮尺図すぎてどの範囲が自粛エリアなのか分かりません。瀬戸内海の小島は消え、江田島湾が埋め立てられて江田島と能美島がくっついています。国際線に乗るとみられるフライトマップのようなレベルの背景図です。そもそもこの自粛要請はドローンのような小型無人航空機を対象にした地図のはずなのに、これではどこが飛行自粛エリアなのかよく分かりません。建物一件単位で表示された地図が無料で利用できる時代にこれは残念です。
幸い、資料にバッファーの中心緯度経度と半径距離が書かれています。
そこで、上記の文字情報を元に ArcGIS Online でマップを作成してみました。資料に書かれていない情報は以下のように推察しました。
- 測地系:航空情報センター作成なので、WGS84 とする
- 海里:1海里 = 1852m の国際海里とする。
- 投影法:不明なので測地線関数でバッファーを作成
作成手順
- PDF 情報を元に CSV ファイルを作成します。Excel で行列を整理して CSV 形式 (UTF-8) で出力します。
- ArcGIS Online でサイン インし(クレジット消費が可能なプランが必要です)、マップ ビューワーを開きます。
- [マップ ビューアー] → [追加] → [ファイルからレイヤーを追加] を選択し、作成した CSV ファイルを読み込み、[レイヤーのインポート] ボタンをクリックします。
- [場所フィールド] で緯度と経度(十進経緯度で記載)のフィールドをそれぞれ指定し、[レイヤーの追加] ボタンをクリックします。
- マップにポイントが表示されました。
- [マップ ビューアー] → [解析] → [近接エリアの分析] → [バッファーの作成] をクリックします。
- 以下の図のように設定し、[解析の実行] ボタンをクリックします。「結果レイヤーの名前」はサービスのエンド ポイント (URL) となるので、空白を除く半角英数が望ましいです。
- バッファー ポリゴンが表示されました。
以上でマップは完成です。ベースマップは適宜して使いやすいものを選択してください。実際に作成したマップがこちらです。[+] ボタンで地図を拡大すると境界線もよく分かります。
使用データ
今回使用したアイテムはマップの説明にリンクを記載しています。元の CSV ファイルを含めて公開していますのでご参考ください。
おわりに
これくらいの地図作成ならわざわざ ArcGIS Pro や ArcMap を使うまでもなく、ArcGIS Online だけで簡単に作成できました。
今回の操作は「紙地図を GIS で表現してみよう。」という課題としてはよい教材でしたが、利用者にとっては扱いやすい結論が入手できれば良い訳なので、地図の出し方としては考え直して欲しいところです。業界の方はまさに GIS で提案できる案件ですね。もしかするとすでにGIS は使われているかもしれないので、単に電子地図のリプレース案件かもしれないです。
私の実家は広島市安芸区にあるのですが、実家のある団地は DID 地区からはずれているので(周囲の同意は必要ですが)申請なしでドローンが飛ばる区域ですが、今回作成した地図で自粛エリアに含まれていることが分かりました。
ちなみにこの PDF、プロパティを開くと、タイトルが「スライド 3」、作成者が「usmilntm」となっており、PowerPoint に貼り付けて作成したっぽいことが確認できます(参考)。現場だけでなく会議室も大変でしょうが、基本的な文書体裁は大切です。