昨日参加させていただいた日本地図学会の地図用語に関する部会で話題になったお話です。
最近衛星測位システムの資料を見ると「GNSS」という用語を聞くようになりました。「GNSS」で通じる方は業界人でしょうが、普通の人には???なことでしょう。でも「GPS」と言えば通じますよね。
1990 年代は「GPS」といわれも???の時代でしたが、最近は携帯やスマホに標準搭載されているので知らない人はさすがにほとんどいないですよね。
GPS は現在位置を測る仕組み
前座です。未だに
カーナビ = GPS
と理解されている方もおられますので、一応
カーナビ ≠ GPS
で、
カーナビ = GPS + ナビゲーションシステム
と補足しておきます。GPS は単に地球上の現在位置(緯度経度など)を求めるシステムなので、別にナビゲーションシステムという地図の表示や行き先案内の仕組みを付け加えたものがカーナビとなります。
「GPS」を連呼してきましたが、常に「GPS」と言っても良いのかが今日の本題です。
GPS はウォークマン
GPS (Global Positioning System) とは、日本語では汎(全)地球測位システムと呼ばれ、米国国防総省が軍事目的に開発したシステムで、複数の人工衛星が発信する電波を受信して現在位置を計測する仕組みです。
GPS が登場した当時、民生に使える衛星測位システムは GPS しかなかったので、たしかに以前は GPS と言えば良かったのです。しかし、この十数年で各国さまざまな測位システムの開発・運用を開始しています。
名称 | 運用国 |
---|---|
Global Positioning System (GPS) | 米国 |
GLONASS(グロナス) | ロシア |
Galileo(ガリレオ) | EU |
北斗衛星導航系統(北斗) | 中国 |
Indian Regional Navigational Satellite System (IRNSS) | インド |
準天頂衛星システム | 日本 |
今や携帯やスマホにも普通に「GPS 受信機能搭載」とか書かれていますが、実は精度を向上させるために GPS 以外に GLONASS や準天頂衛星に対応した機種も多く販売されていますので、人工衛星を使った測位システムをすべて「GPS」というと誤りになってしまいます。
では何といえば良いのか、「GNSS (Global Navigation Satellite System(s))」というのが適当です。
国土地理院は平成23年3月31日(国土交通省告示第334号)の公共測量作業規程準則改定の中で、従来の「GPS」を「GNSS」と呼称するように用語が変更されました(資料)。
そこから「GNSS」という用語が広がりはじめましたが、GPS と GNSS と何が違うのか、それは固有名称か一般名称かの違いです。図でグルーピングするとこうなります。
GPS はいわば(昭和生まれの人にとっては)携帯音楽プレーヤーをウォークマンと言うようなものです。平成生まれだとその代名詞は iPod でしょうか。
昔 「ウォークマンはソニーの商標だからパナソニックのプレーヤーはヘッドフォンステレオって言わないと間違いだよ。」と誰かに言われました(※ヘッドフォンステレオ はカセットテープのプレーヤーを指すので、MP3 プレーヤー含めたものは携帯音楽プレーヤーというそうです)。
立場上、私たちは「GNSS」と言うべきでしょうが、普通の人にはまったく通じないのでその辺は時と場所で「GPS」と使い分けることにしていきます。ギークな人には衛星測位システムを「GPS」と言うのは携帯プレーヤーを「ウォークマン」というようなもので「GNSS」というのが正確ですと説明すればウォークマン世代には伝わるのかなと思っています。若い人には iPod で。
ちなみにまったく別の話題で、タイやベトナムではバイクのことを「ホンダ」という割と有名な話があります。「私はヤマハのホンダに乗っています。」の会話が成り立つという。「ロシアには GLONASS という GPS があります。」、、、おかしい。