インターネット地図サービスを利用していると、地図のモードをまるで宇宙から見下ろしたかのように表現することができます。実際には宇宙から見下ろしているのは人工衛星で、人工衛星が撮影したものを元に表現したものを主な地図サービスはそれぞれこのような名称で示しています。
Googleマップ
「Earth」となっています。
Bing地図
「航空写真」となっています。
Yahoo!地図
「写真」となっています。
ArcGIS Online
「衛星画像」となっています。
テレビやネットではこれらを「衛星写真」と言うケースが多いですし、一部の商品でも衛星写真と付けられているものがありますが、実は「衛星写真」という用語は間違いで、「衛星画像」というのが正解です。英語では satellite imagery です。ちゃんと「衛星画像」と示しているのは流石 Esri。
なぜ衛星画像を photography と言わないのかというと、人工衛星で撮影されているものは特定の分光波長帯の反射・放射をセンサーでデジタル データとして取得し、それを画像化してカラー合成したマルチスペクトル画像だからです。写真のように見えるのは画像の表現方法が肉眼で見たものに似通って見えるのに過ぎません。古典的な 1960 年代人工衛星では写真撮影を行っていたものがありましたが、現在の人工衛星で撮影されているものは写真撮影ではありません。
一方で飛行機で撮影したものがありますが、これは「航空写真(空中写真)(aerial photography)」といいます。航空写真は航空機に搭載されたカメラはから撮影された写真です。実際にフィルムを使っていました。現在は現像が不要なデジタルカメラが主流になっています。
インターネット地図サービスの画像が航空写真から作成されたものなら「(航空)写真」で間違いないのでしょうが、高解像度衛星画像が使われているケースもありますし、関東一円のような小縮尺の場合は明らかに衛星画像が使われています。なので「(衛星)画像」というのが正しいのでしょうね。
地理情報科学事典では「衛星画像」と掲載されています。その他の専門書でも「衛星画像」となっています。
なお、人工衛星や航空機で撮影したものの位置や歪みを補正する一連の作業を 「写真測量(photogrammetry )」といいますが、これは人工衛星を使用する場合であっても、航空写真から始まった歴史的経緯から「写真~」という用語になっています。
以前リモートセンシングに強い上司から「『衛星写真』というものはない、『衛星画像』と言いなさい。」とお叱りを受けたことがありました。私自身も専門用語が難しいからという理由で新しい用語を作り出すことには反対の立場です。1 つ覚えれば良い用語に対して同義語が 2 つ、3 つと増え用語の乱立を招くからです。
これから衛星画像と言うようになれば「こいつ分かってるな。」と他人からの見る目が変わってきます(と信じたい)。