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「Web メルカトル(ウェブメルカトル)」の由来と真相

2016/2/17 (水)

ここ数年で Web マップが流行っていることから「Web メルカトル」という言葉をよく聞くようになりました。今日は前回予告した大題に挑んでみます。

メルカトルとは

「Web メルカトル」に入る前に「メルカトル」について説明しておきます。「メルカトル」は「メルカトル図法」という投影法を作った人の名前です。メルカトル図法の表現は Googleマップでおなじみです。

「地図投影法」とは丸い地球をいかに平ら(地図)に表現するかという方法です。メルカトル図法には正しい角度が表現できるけど距離や面積は正しくない(ここへの突っ込みは今回はしません)という特性があります。今日のテーマの根底にある Googleマップに採用されたので誰でも一度は見たことがある投影法となりました。

ちなみに、メルカトル図法は円筒図法というグループに所属しますが、円筒図法の原理によく出てくる図(下)がメルカトル図法を表していると誤解されがちです。この円筒で表した図法は心射円筒図法(central cylindrical projection)となります。この図法の実用性は全くなく、メルカトル図法と相違することを示す教育目的にのみ有用であると言われています。そのためか、心射円筒図法は ArcGIS ではサポートされていません。

円筒図法(Wikipedia より引用)

実際、ArcMap でメルカトル図法に投影すると、緯度 89 度まで表現できます。緯度85度まで表現した心射円筒図法のを見ると緯度 89 度を表現するには途方もない高さになることが想像できます。メルカトル図法を含めて、投影法については政春尋志氏の『地図投影法』を読むことをお勧めします。現在も出版されている書籍の中では投影法について一番詳しく書かれていると考えています。絶版になっている野村正七(しょうしち)氏の『地図投影法』が入手可能ならこちらも手に入れるべき書籍です。

地図投影法

政春尋志
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地図投影法 (1983年)

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メルカトル図法については別の記事で詳しく説明しているので参考にしてください。

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Web メルカトル

Googleマップは「メルカトル図法」で描かれているということは分かりました。では「Web メルカトル」になると何が違うのでしょうか。インターネットで検索された上位のサイトを掲載日の古い順に紹介します。

上記のサイトでは、メルカトル図法を使用して南北85度以内で表現すると、ちょうど地図が正方形となりタイルの形状がシンプルになる、それが Webメルカトルという説明として認識できます。タイルの定義についてはこちらを見てみてください。

そこから転じて、ArcGIS を操作していると座標系(「座標参照系」と書くのが厳密ですがここでは座標参照系=座標系という意味で説明します)の選択肢に「Web メルカトル」と描かれているので、 「Web メルカトル」は「座標系の定義も含んだ)タイルマップの定義」として認知されているように見受けられます。しかし、インターネットでは括弧で示した「座標系の定義」に触れた解説はほとんど見つけられませんでした。

ここで疑問に思うのが、座標系にタイルの定義が含まれているのだとすると、平面直角座標系や UTM座標系は何のタイルが定義されているのか?ということです。Webメルカトル座標系の定義にタイルの情報が含まれているのであれば、平面直角座標系や UTM座標系にも何かしらのタイルの設定情報があるのかと考えてしまいますが、他の座標系にタイルの定義なんてありません。Webメルカトル座標系だけ特別にタイルの定義情報が含まれているのでしょうか。

今回お伝えしたいことは「Web メルカトル」は「Web メルカトル座標系」の略称で、「座標系」のところに本意がある、ということです。

また懐かしい歴史の振り返りと共に解説します。

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