2015年は謹賀新年投稿もせず、気がつけば1月も終わろうとしています。何か書かないと!ということで専門的すぎまじめな GIS のティップスを書いておきます。忙しい方は結論をお読みください。
ArcGIS Online によって Web 上で利用できる ArcGIS.com マップ ビューア というものがありますが、これに「異なる測地系のレイヤを追加したらどうなるのか?」という質問がありました。
日本で使う測地系は主に4種類あります。
- WGS84(WGS84)
- 日本測地系2011(JGD2011)
- 日本測地系2000(JGD2000)
- 日本測地系(Tokyo)
ArcGIS.com マップ ビューアで表示されている背景図(ベースマップ)の測地系は WGS84 なので、JGD2011 と JGD2000 はそのままでも正しい位置関係で重なると言えます。しかし、Tokyo だけは全く異なる測地系なので 400m ~ 500m と顕著にずれて表示されます。
※この辺の解説はいつか詳しく説明します。
このずれを補正する変換式がありますが、持っているデータ・データの測量方法によって変換方法を使うかは人間が判断しなければ行けません。ArcMap では「地理座標系変換」という名称で変換方法を選択する設定があります。
ArcMap ではマップとレイヤの測地系が異なっていても既定で地理座標系変換は設定されないので測地系の違いを無視した重ね合わせをします。つまり、異なる測地系のレイヤを重ね合わせすると、位置関係がずれて表示されます。
日本の場合、ずれを補正する式として2つの要素が必要になります。
- 回転楕円体の変換(400m~500mのずれ)
- 測量歪みや地殻変動の補正(1~10数m のずれ、ただし一部の離島は100m 以上)
上記の変換方法一覧で、"_1", "_2" と書かれているのが回転楕円体の変換のみを行うもので、"_NTv2" と書かれているものが回転楕円体の変換+測量歪みや地殻変動の補正を行う式です。
で、本題の ArcGIS.com マップ ビューアの場合ですが、このビューアには地理座標系変換を選択する GUI は用意されていません。しかし、実際に異なる測地系のデータを重ね合わせると、地理座標系変換の機能は働いているようです。
上の画像は沖縄県竹富町の竹富島です。石垣島と西表島の間に位置しています。一番沖縄らしい島、と呼ばれてるこの島ですが、竹富島にある三角点をWGS84 のベースマップに JGD2011 と Tokyo でそれぞれ測量した三角点を表示しました。すると2つの三角点は 250m ずれて表示されます。
先ほど説明したように回転楕円体の違いがあれば 400m~500m ずれるはずですが、それとは異なるずれ方をしています。竹富島は上記の一部の離島に該当する島で100m 以上の測量歪み誤差が生じる地域です。
ということで、ArcGIS.com マップ ビューアは回転楕円体のみの補正をしているということが分かります。
ArcMap で「Tokyo_To_JGD_2000_1」の変換方法と比較してみましょう。
一致します。
結論
ArcGIS.com マップ ビューアで異なる測地系のレイヤを追加した場合、特定の測地系間で決められているデフォルトの地理座標系変換が行われるようです。日本測地系と日本測地系2000の場合は「Tokyo_To_JGD_2000_1」が適用されます。
ただ、多くの場合、測量歪みの補正も考慮した「Tokyo_To_JGD_2000_NTv2」が使用するべきなので、オンライン上で利用するデータは世界測地系に合わせた方が良い、と言えます。