これまで,日本測地系(東京測地系)のデータセットを日本測地系2000(世界測地系)に変換するには,ArcTKY2JGDを使用する必要がありました。このツールは,ArcCatalogのコマンド ボタンから起動するツールで,既存のフィーチャクラス(シェープファイルやジオデータベース)から測地基準系を変換した新しいフィーチャクラスを作成するというものです。
ArcGIS 9.3では,ArcGISの地理座標系変換アルゴリズム(NTv2)を用いてTKY2JGDに対応した変換が可能となりました。これによって,フィーチャクラス以外にもラスタ データセットの変換ができたり,ジオプロセシングツールでの使用,ArcMapでのリアルタイム変換,ArcObjectsで利用が可能となります。 GUIでの利用方法は説明資料を参照してもらうこととし,ここでは,ArcObjectsでの操作方法を説明します。
ArcObjectsで地理座標系変換を行うには,IGeoTransformationを実装したNTv2Transformationオブジェクトを作成する必要がありますが,バージョン9.3ではISpatialReferenceFactory::CreateGeoTransformation()ための定数が用意されいません。そのため,TKY2JGD変換を行うには,NTv2Transformationオブジェクトを新規に作成する必要があります。
TKY2JGDの地域毎パラメータ ファイルは,<ArcGISインストール フォルダ>\pedata\ntv2\japan\tky2jgd.gsbに保存されています。バージョン9.3では,この地域毎パラメータ ファイルにアクセスするためにGTFファイル(Tokyo_To_JGD_2000_NTv2.gtf)を使用して対処してます。
GTFファイルはArcToolboxの「カスタム地理座標系変換の作成 (Create Custom Geographic Transformation)」ツールで作成できるファイルで,GUIの”変換方法”に表示させるためには,<OSドライブ>\Documents and Settings\<ユーザ名>\Application Data\ESRI\ArcToolbox\CustomTransformations(Windows XP,2003 Serverの場合)に保存しておきます。 なお,NTv2TransformationとArcTKY2JGDのどちらで処理を行えば良いのかということですが,国土地理院のTKY2JGDでは,地域毎パラメータが4点取得できた際に座標変換を行い,4点未満の際は3パラメータ変換(楕円体の変換のみ)を行います。NTv2Transformationでは,2点未満になるまで地域毎パラメータで補正しようとします。厳密に国土地理院と同様の変換結果を得るためにはArcTKY2JGDを使用する必要があるでしょうが,内陸部はすべて地域毎パラメータが整備されているので実質問題ないでしょう。