YouTube | Facebook | X(Twitter) | RSS

扁平率の求め方

2014/8/25 (月)

はじめに

海外の測地系を定義したいが以下の楕円体は ArcGIS でどの定義を使えば良いのか?という質問を受けました。

SPHEROID:EVEREST'S,  A=6377303.96300 METER, B=6356102.91400 METER, F=1/300.8017

最初、"EVEREST" という語を見て D_Everest_1830 だろうと思い回答したら、Everest_1830 楕円体は以下の大きさで、上記と一致しないという指摘を受けてしまいました。

Everest_1830 A=6377299.3600000003m B=6356098.35162804m

ArcGIS で "EVEREST" の名のつく楕円体は 7 種類ありますが、どれにも該当しなかったので、「<カスタム> を使って独自に楕円体の定義をしてください。」と回答してしまいました。

楕円体

後日、そもそも最初になぜ D_Everest_1830 だと思い込んでしまったのかを見直していると、Everest_1830 の扁平率が一致していたために勘違いしたのだと気づきました。

測地基準系

Everest_1830 f = 1 / 300.8017

そこで、「扁平率だけ一致する楕円体ってあるの?」という疑問と「ArcGIS でよく使われる楕円体の定義がない訳がない」という信奉論の元に、大学の授業で習った「扁平率の計算」をやってみました。

本編

扁平率とは、回転楕円体が球体に比べてどれだけつぶれているかを表す値です。測地学で使われる扁平率は微小な値なので、分数で表現するか、逆数で表すのが一般的です。

参考:扁平率(Wikipedia) 偏平率
式は以下のようになります。

扁平率 f = (a - b) / a = 1 - (b / a)
扁平率の逆数 1/f = 1 / ((a - b) / a) = 1 / (1 - (b / a))
例:GRS80 楕円体(JGD 2000 で採用されいてる楕円体)の場合
長半径 a = 6,378,137m
短半径 b = 6,356,752.314 140 356m
扁平率の逆数 1/f = 298.257 222 101

実際に最初に提示された情報を使って計算してみます。Windows の関数電卓に情報を入れて計算するとこのようになります。

f = 1 - 6356102.914 / A6377303.963 = 0.0033244532678707
1 / f = 300.8013 ≠ 300.8017

ということで、元の情報に誤りがあったことが分かりました。

扁平率の求め方、習ってから十数年を経て初めて実践で役に立つことを実感しました。

今日の格言

学んだことはいつか役立つ!!(前にも書いたけど)

2021年8月30日追記

地図学で使用する漢字が異なるとのご指摘をうけて「偏平率」→「扁平率」に変更しました。

  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『"地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

-GIS, 基礎知識
-