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ArcGISにおける鉛直座標系の座標変換

2024/12/14 (土)

座標系の変換とは、一般的に水平方向(経緯度)の座標値の変換を指しますが、高さの基準を変換する鉛直座標系変換という操作もあります。ArcGIS 10.3以前では鉛直座標系の定義自体はできていましたが、バージョン10.4から鉛直座標系の変換が実装されました。鉛直座標系も、数学的に計算上変換できる処理と、地域ごとのパラメーターによって変換するものがあります。

高さの種類についてはGIS で使用されている高さの種類をご覧ください。

日本で使われる高さの基準

EPSGに登録されている日本の鉛直座標系は次のとおりです。EGMは重力モデルの成果です。WGS84は本来GPSで扱われる測地系なので高さは楕円体高で求められます。EGMで求められたジオイド高を差し引けば標高(平均海面高)が求められます。JGEOIDは日本の重力ジオイドモデルですが、まだEPSGは付与されていないようです。

名前EPSG意味
JSLD69 height5723日本測地系における東京湾平均海面(北海道を除く)の鉛直座標系
JSLD72 height6693日本測地系における東京湾平均海面(北海道)の鉛直座標系
JGD2000 (vertical) height6694日本測地系2000における鉛直座標系
JGD2011 (vertical) height6695日本測地系2011における鉛直座標系
EGM2008 height3855全球重力場モデル
JGEOID2004日本の重力ジオイドモデル
JGEOID2008日本の重力ジオイドモデル

操作方法

ArcGIS Pro でフィーチャクラスのZ値を変換する方法です。鉛直座標系を変換するには、「投影法の定義」ツールで鉛直座標系を含めた定義を行い、「投影変換」ツールでの変換時に、測地系変換パラメーターを指定します。

  1. 変換パラメーターのダウンロード
    My Esriのダウンロード ページから変換ファイル(ArcGIS Coordinate Systems Data)をダウンロードしてセットアップします。
  1. 座標系の定義
    Z値を持つフィーチャクラスに対して、「投影法の定義」ツールで鉛直座標系を定義します。JGD2000/2011の楕円体高をEGM2008に変換するパラメーターは存在しないため、元の高さが楕円体高である場合は日本の測地系であっても「WGS 1984」を定義します。
  2. 投影変換
    「投影変換]ツールで鉛直座標系の変換もできますので、パラメーターに以下を指定して実行してください。
    ・出力座標系の鉛直座標系に「EGM2008 Geoid」を指定
    ・「鉛直」にチェック
    ・地理座標系変換に「WGS_1984_To_WGS_1984_EGM2008_1x1_Height」を指定
  3. 変換後のポイント フィーチャクラスから座標値をフィールドの出力
    座標値を属性として出力されたい場合は、「ジオメトリ属性の計算」ツールで、ポイント ジオメトリのZ値をフィールドに出力します。
    変換パラメーター

JGD2011の楕円体高からEGM2008には変換できませんが、「JGD_2011_To_JGD_2011_Vertical_Height_1」によって、JGD2011から2011_Vertical_Height(国土地理院公開の日本のジオイド2011)によるジオイド高からの高さ(=標高)に変換できるようです。

Esriの資料によると、「WGS_1984_To_WGS_1984_EGM2008_1x1_Height」はEGM96ジオイドを基にした1秒グリッド(地域ごとパラメーター)による変換となるようです。「WGS_1984_To_WGS_1984_EGM2008_1x1_Height」で使用されているFile Nameが「Dataset_egm2008-1.grd」とあるので、以下のファイルのグリッド パラメーターを使用しているものと考えられます。

C:\Program Files (x86)\ArcGIS\CoordinateSystemsData\pedata\vertical\world\egm\egm2008-1.grd

おわりに

日本の標高は、法令上は東京湾平均海面(TP)と呼ばれていますが、明治の測量以降130年の間に2回改定されています(出典)。日本水準原点は、1891年当所は24.500mでしたが、1928年の関東大震災で24.414m、1949年の測量法施行令制定で24.4140mとなり、2011年の東日本大震災で24.3900mとなりました。2回改測されていますが、いずれも「東京湾平均海面」と呼ばれるので、扱いがややこしいです。

2025年には、従来の東京湾平均海面からの水準測量だった高さの基準が、GNSS測量によるものに変更されます(出典)。新しい基準による標高は何と呼ばれるのでしょう?

参考

  • この記事を書いた人

羽田 康祐

伊達と酔狂のGISエンジニア。GIS上級技術者、Esri認定インストラクター、CompTIA CTT+ Classroom Trainer、潜水士、PADIダイブマスター、四アマ。WordPress は 2.1 からのユーザーで歴だけは長い。 代表著書『"地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』 GIS を使った自己紹介はこちら。ESRIジャパン(株)所属、元青山学院大学非常勤講師を兼務。日本地図学会第31期常任委員。発言は個人の見解です。

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