座標系の変換とは、一般的に水平方向(経緯度)の座標値の変換を指しますが、高さの基準を変換する鉛直座標系変換という操作もあります。ArcGIS 10.3以前では鉛直座標系の定義自体はできていましたが、バージョン10.4から鉛直座標系の変換が実装されました。鉛直座標系も、数学的に計算上変換できる処理と、地域ごとのパラメーターによって変換するものがあります。
高さの種類についてはGIS で使用されている高さの種類をご覧ください。
日本で使われる高さの基準
EPSGに登録されている日本の鉛直座標系は次のとおりです。EGMは重力モデルの成果です。WGS84は本来GPSで扱われる測地系なので高さは楕円体高で求められます。EGMで求められたジオイド高を差し引けば標高(平均海面高)が求められます。JGEOIDは日本の重力ジオイドモデルですが、まだEPSGは付与されていないようです。
操作方法
ArcGIS Pro でフィーチャクラスのZ値を変換する方法です。鉛直座標系を変換するには、「投影法の定義」ツールで鉛直座標系を含めた定義を行い、「投影変換」ツールでの変換時に、測地系変換パラメーターを指定します。
- 変換パラメーターのダウンロード
My Esriのダウンロード ページから変換ファイル(ArcGIS Coordinate Systems Data)をダウンロードしてセットアップします。
- 座標系の定義
Z値を持つフィーチャクラスに対して、「投影法の定義」ツールで鉛直座標系を定義します。JGD2000/2011の楕円体高をEGM2008に変換するパラメーターは存在しないため、元の高さが楕円体高である場合は日本の測地系であっても「WGS 1984」を定義します。 - 投影変換
「投影変換]ツールで鉛直座標系の変換もできますので、パラメーターに以下を指定して実行してください。
・出力座標系の鉛直座標系に「EGM2008 Geoid」を指定
・「鉛直」にチェック
・地理座標系変換に「WGS_1984_To_WGS_1984_EGM2008_1x1_Height」を指定 - 変換後のポイント フィーチャクラスから座標値をフィールドの出力
座標値を属性として出力されたい場合は、「ジオメトリ属性の計算」ツールで、ポイント ジオメトリのZ値をフィールドに出力します。
(変換パラメーター)
JGD2011の楕円体高からEGM2008には変換できませんが、「JGD_2011_To_JGD_2011_Vertical_Height_1」によって、JGD2011から2011_Vertical_Height(国土地理院公開の日本のジオイド2011)によるジオイド高からの高さ(=標高)に変換できるようです。
Esriの資料によると、「WGS_1984_To_WGS_1984_EGM2008_1x1_Height」はEGM96ジオイドを基にした1秒グリッド(地域ごとパラメーター)による変換となるようです。「WGS_1984_To_WGS_1984_EGM2008_1x1_Height」で使用されているFile Nameが「Dataset_egm2008-1.grd」とあるので、以下のファイルのグリッド パラメーターを使用しているものと考えられます。
C:\Program Files (x86)\ArcGIS\CoordinateSystemsData\pedata\vertical\world\egm\egm2008-1.grd
おわりに
日本の標高は、法令上は東京湾平均海面(TP)と呼ばれていますが、明治の測量以降130年の間に2回改定されています(出典)。日本水準原点は、1891年当所は24.500mでしたが、1928年の関東大震災で24.414m、1949年の測量法施行令制定で24.4140mとなり、2011年の東日本大震災で24.3900mとなりました。2回改測されていますが、いずれも「東京湾平均海面」と呼ばれるので、扱いがややこしいです。
2025年には、従来の東京湾平均海面からの水準測量だった高さの基準が、GNSS測量によるものに変更されます(出典)。新しい基準による標高は何と呼ばれるのでしょう?
参考
- 解説 測地原子と鉛直原子
- 鉛直座標系
- Introducing Vertical Transformations in ArcGIS PDF(Esri)
- Geographic and Vertical Transformation Tables PDF(Esri / ArcGIS Pro 最新?)
- Geographic and Vertical Transformation Tables PDF(Esri / ArcGIS Pro 3.3)
- Geographic and Vertical Transformation Tables PDF(Esri / ArcMap 10.8.2)